「ほろ酔い」という言葉ほど日本酒に合う言葉はあるまい。
確かにビールや焼酎でも「ほろ酔い」になるのは違いないが、ビールはジョッキで一気飲みが一番だし、焼酎は酔いが目的で飲む。私に言わせれば「ほろ酔い」という言葉に秘められた意味は、もっと情緒豊かな心持のことで、日本酒以外で酔ったとき「ほろ酔い」などと簡単に使ってほしくない。
「ほろ酔い」の似合う場面はいろいろあるが、中でも一番は屋外でのほろ酔い気分だ。
自然の中を少しボーっとしながらフラフラ歩く。素面の時には見えなかった何かが不思議と見えてくる気がする。おそらく世の中のさまざまな嫌なことを忘れて、純粋な本来の自分を取り戻した瞬間なのだろう。
そういった意味では、旅先のほろ酔いが最高のほろ酔いに違いない。旅館の朝食のとき、陶器のデキャンタにお湯を少し入れてもらい、そこに同量の純米吟醸を注ぐのだ。宿の仲居さんは目をパチクリするだろう。しかし、かまわず湯のみでグイッとやる。アルコール度数は8度くらいだろうか。やはり日本酒を飲むというには少し物足りなくはないが、昨晩の酒が残った二日酔いの体には堪えられない美味さである。
そしてまた「ほろ酔い気分」で旅を続ける・・・・・・。至福のときだ。